日常会話に出てくるとモヤっとする数学用語
雑記的なものも書いていこうと思うので、僕の好きな数学に寄せた話でも。
数学を日常生活で使う機会なんてほとんどありませんよね。しかしたまに「数学用語」を耳にすることがあります。もちろん数学的な意味で使っているわけではなく、ざっくりとした感じで。日常会話なのでなんとなく意味が伝われば良いのは分かります。分かりますが、数学をやっている身としてはどうしてもモヤっとしてしまいます。「え?それどういう意味で使ってる?」と聞きたくなります。聞きませんが。
ということで、気にするほどでもないけど日常会話で出てくるとなんとなくモヤっとする数学用語をいくつか挙げてみたいと思います。
「ベクトル」
「大きさ」と「向き」を持つ量のことですね。日常会話では、「あなたと私の考えはベクトルが違うね」などのように使ったりします。「方向性」的な意味で使うことが多いでしょうか。しかし数学的には「向き」だけでなく「大きさ」という意味も含まれています。これだけだと「大きさ」が違うのか、「向き」が違うのか、はたまたその両方が違うのか分かりません。「考えている方向性は同じだけどおまえの考えは浅いんだよ!」という意味で使っているのかもしれません。
そこで、日常でこのようなモヤモヤ感を味わわないためにはどうすれば良いか。それはベクトルが「違う」ときではなく「同じ」ときに使えば良いのです。「君とはこのプロジェクトにかけるベクトルが同じだね!」のように使えば「大きさ」も「向き」も揃っているということが分かりますね。零ベクトルだったら困りますが。
「確率」
これは悪しき言葉。諸悪の根源。稀代のワル。"確率" is more evil than devil.
「確率」という言葉を聞くたび、「確率変数は?分布は?」と考える癖が付いてしまっています。そのくらい「確率」という言葉はちゃんと定義する必要があるのです。数学では。
「今度の飲み会来れる?」
「まだ分かんない。行ける確率60パーくらいかなー。」
「(゚Д゚)ハァ?確率変数は何?」
まぁそこまで目くじらを立てるものでもないので、別に良いのですが。問題は「確率」と「率」の混同です。英語で言うと「probability」と「rate」でしょうか。これは日本語の問題もあると思いますが、別物なのでちゃんと使い分けてほしいところです。
「率」とはいわゆる「割合」のこと。10回戦って7回勝ったから勝率70%、みたいな感じで使います。これを「勝つ確率70%」というのは間違いです。いや「言葉」なので間違いかどうかはどうでもよく、とにかくモヤっとします。それは「率」だろうと。
ということで「率」の意味で「確率」を使う「率」を減らしていきましょう。
「それ以上でも以下でもない」
これって数学用語なの?・・・という疑問はさておき、この言葉は「それ」であることを強調するときに用いる言葉です。例えば、「彼女とは友達で、それ以上でもそれ以下でもない!」といった感じです。この場合、彼女とは「他人」でもなければ「恋人」でもない、「友達」なんだということを強調していることになります。恐らく彼女との浮気を疑われているのでしょう。
しかし誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
「以上でも以下でもないって存在しなくない?」
と。
数学的に考えれば、 を定数として「 でない」かつ「でない」を満たす ということになります。もちろんそのような は存在しません。「解なし」が正解です。つまり、彼女との関係は「解なし」という何とも哲学的な関係になりますね。
少し気になるのが「以上」「以下」という言葉からも分かる通り、この言葉を使う際は何かしらの「順序」が背景に潜んでいるということです。先ほどの例でいうと「他人 < 友達 < 恋人」という順序があります。順序なんて意識せず使うと思いますが、言葉の裏に潜む順序を探ってみるのも面白いかもしれません。
因みに中国語では「以上」「以下」は「=(イコール)を含まない」と聞いたことがあります。もしかしたらこの言葉は中国から入ってきたものなのでしょうか。